傷病手当金の待期(待機)期間
傷病手当金の制度を説明する上で、一番最初のハードルとなるのがこの待期期間というものです。
下記4つののパターンを見れば、どのようなものなのかすぐに理解できると思います。とにかく、3日間続けて休むと完成することを覚えましょう。
3日間の待期期間の考え方
①一般的なケース
②待期期間に有休を使うケース
③連続しないため待期期間が完成しないケース
④待期期間に公休日を含めるケース
待期期間が始まる前に医師の診察を受けておく
働けなくなった日から起算して連続した3日間の働けない期間を待期期間(待機期間ではありません!)と言います。この間は、傷病手当金は支給されません。考え方は上の表の通りです。
まずは、待期期間の前に労務不能な状態であることが前提となっていますので、病気やケガをした場合は、医師の診察を受けておきましょう。請求の際に証明を書いてもらわなくてはならないからです。
医師は基本的に受診した日からの容体を傷病手当金支給申請書に記入し、仕事ができなくなったかどうかの証明をしますので、受診(初診)の日がとても大切になるのです。
待期期間については、有休・公休があってもいいので連続した3日間の労務不能(働けない状態)期間がなければなりません。
参照:(昭和32年1月31日 保発第2号)
健康保険の傷病手当金にかかる疑義について、何分のご回答を願います。
1 健康保険の傷病手当金は、「被保険者ガ療養ノ為労務ニ服スルコト能ハザルトキハ其ノ日ヨリ起算シテ第四日ヨリ労務ニ服スルコト能ハザリシ期間……支給ス」とありますが、「第四日ヨリ」とは療養のため労務に服すること能はざりし状態が連続四日以上あることを必要とするものであるかまたは連続三日間にわたつて療養のため労務に服し得なかつた者が、偶々、第四日目に労務に服し、第五日目以後再び労務に服し得ない状態になつた場合にも支給できるものであるか。
(設例)(イ) 休休休休出休
(ロ) 休休休出休2 「療養ノ為労務ニ服スルコト能ハザルトキハ其ノ日ヨリ起算シ第四日ヨリ」とは、療養のため労務に服し得ない状態が連続して三日間経過することを必要とするものであるか、または療養のため労務に服し得なかつた日から起算して第四日から支給するということで第二日および第三日は労務に服しても支障ないものであるか。
(設例) (イ) 休休休休
(ロ) 休出休休3 健康保険法第五十五条の規定により被保険者の資格を喪失した後に傷病手当金を支給するには、資格喪失の日前に療養のため労務に服し得ない状態が連続して四日間以上あることを必要とするものかまたは三日間(この場合、資格喪失の日は労務に服し得ない状態にあるものとする。)あれば足りるものであるか。
(回答)
1 健康保険法(以下「法」という。)第四十五条は、傷病手当金に関し、「被保険者ガ療養ノ為労務ニ服スルコト能ハザルトキハ其ノ日ヨリ起算シ第四日ヨリ労務ニ服スルコト能ハザリシ期間……支給ス」と規定しているので、「第四日ヨリ」を「第四日以後」と解し、療養のため労務に服することのできない状態が同一傷病につき三日間連続していれば、すでに待期は完成したものとして、取り扱われたい。従つて、設例の場合、(ロ)にあつても待期はすでに完成しており、第五日目より傷病手当金の支給を行うべきである。
2 右のとおり、法第四十五条に定める待期は、療養のため労務に服することのできない状態が三日間連続することが必要であるとともに、これをもつて足りるのであり、設例の場合、(ロ)にあつては、いまだ待期は完成していないものと解される。
3 法第五十五条は、「被保険者ノ資格ヲ喪失シタル際疾病、負傷又ハ分娩ニ関シ保険給付ヲ受クル者ハ……同一保険者ヨリ其ノ給付ヲ受クルコトヲ得」と規定しているが、この「保険給付ヲ受クル者」とは、療養の給付を受給中の者のように現に給付を受けているか、又は労務不能期間中であつても、報酬の全部が支給されているため法第五十八条の規定によつて傷病手当金の支給を一時停止されている者のように、現に給付を受けてはいないが、給付を受けうる状態にあるものをいうものと解されているのに対し、設問の場合、資格喪失の日前療養のため労務に服することのできない状態が三日間連続しているのみでは、いまだ、現に傷病手当金の支給を受けているわけではなく、また、支給を受ける状態にもないので資格喪失後の継続給付としての傷病手当金の支給を受けることはできないものと解される。
※解説
1・2は待期期間の考え方について、連続した3日間がないといけないという説明。1の(ロ)は、3日間休んだ後に、1日出勤した場合でも待期は完成することを説明しています。(最初に説明したケース④に該当するような場合)3は継続給付の場合の待期期間が4日間いるという説明。退職を考えている場合は、重要な話なので詳しくは下記をご確認ください。
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ルールが変わる?継続給付の支給期間
継続給付の場合、断続して受けられない 継続給付を受ける場合の一番の落とし穴は、一度病気やケガが治って働ける状態になり、受給を受けなかった(受けられなくなった)場合、再度、体調が悪化して働けなくなったと …
待期期間の起算日
働いている事業所の就業時間中に盲腸になって救急車で運ばれた場合などは、その日が待期期間の起算日になります。
この場合、給与の一部、全部をもらっていても構いません。就業時間外であれば、会社で倒れたとしても、翌日が起算日となります。
また、夜勤の人など(勤務が午後6時から翌午前4時の場合など)、2日にまたがる場合は、午後23時に救急車で運ばれた場合などは、その日から、勤務中であっても午前2時に具合が悪くなって帰宅した場合などではその日(勤務が始まった翌日)からと暦日(午前0時から24時までの24時間)が起算日になります。
*会社で病気やケガをした場合、それが業務上であれば労災になりますので、傷病手当金ではなく、労災保険の休業補償給付を受けることになります。
参照:(昭和5年10月13日 保発第52号)
従来健康保険法第四十五条ノ規定ノ適用ニ付被保険者カ労務ニ服シタルモ就業時間中ニ傷病ノ療養ノ為労務ニ服スルコト能ハサルコトトナリタル場合ニ於テハ其ノ日ノ報酬ノ全部又ハ一部ヲ受ケタルト否トヲ問ハス其ノ傷病カ業務上ノ事由ニ依ル傷病ニ在リテハ其ノ日ハ傷病手当金ヲ支給シ業務上ノ事由ニ因ラサル傷病ニ在リテハ其ノ日ハ傷病手当金支給待期三日ノ中ニ包含セラルルモノト解シ居候右ハ理論上並実際上ノ理由ニ依リ今般左記ノ如ク解釈ヲ一部変更致候条爾今之ニ依リ取扱相成度
追而傷病ノ療養ノ為労務ニ服スルコト能ハサリシ者カ其ノ後労務ニ服シ其ノ後更ニ右ノ傷病ノ為ニ労務ニ服スルコト能ハサルニ至リタル場合及公休日ニ報酬ヲ受ケタル場合モ左記第一ノ二ニ準シ傷病手当金ヲ支給相成度又出産手当金ノ支給ニ付テモ同様ニ有之
記
第一 業務上ノ事由ニ因ル傷病ノ場合(削除)
第二 業務上ノ事由ニ因ラサル傷病ノ場合 従前ニ同シ(註)
註 療養ノ為労務ニ服スルコト能ハサル期間ノ従前ノ取扱
一 法第四十五条ノ労務ニ服スルコト能ハサル期間ハ労務ニ服スルコト能ハサル状態ニ置カレタル日ヨリ之ヲ起算スルモノトス但シ其ノ状態ニ置カレタル時カ業務終了後ナル場合ニ於テハ翌日ヨリ之ヲ起算スルモノトス
※解説
就業時間中に業務外の病気やケガになった場合は、報酬の全部もしくは一部を受けていたかどうかに関わらず、その日は傷病手当金の待期期間に含むこととする。
業務終了後の場合は翌日より起算するものとする。
参照:夜勤の場合の通達(昭和4年12月7日 保規第488号)
工場又は事業場で昼夜交代して作業を続行するため夜勤のものが午後6時から翌日午前6時まで勤務し1日の作業であるが、2日にまたがるような場合には暦日による。
病気やケガになり、一旦3日以上休んだが、復帰して働いてまた休んだ場合の待期期間
この場合、同じ病気やケガであった場合、待期期間は最初の3日間で完成しているため、また休んでから3日間の待期期間はありません。
うつ病の場合では、休んで復帰してを繰り返したりすることがあると思いますが、支給期間は最初に待期が完成してから1年6カ月ですので、復帰して働いた期間があったとしても支給期間が変わることはありません。
参照:(昭和2年3月11日 保発第1085号)
昭和二年二月二十五日付旭給第二七二号ヲ以テ伺出相成候標記ノ件右ハ疾病又ハ負傷ニ付最初ニ療養ノ為労務ニ服スルコト能ハサルニ至リタル場合ニ於テノミ待期ノ適用アルモノニシテ其ノ後労務ニ服シ(医師ノ指示ノ有無ヲ問ハス)其ノ疾病又ハ負傷ニ付更ニ療養ノ為労務ニ服スルコト能ハサルニ至リタル場合ニ於テハ待期ノ適用ナキモノニ有之
※解説(現代語訳)
昭和2年2月25日付旭給第272号をもってすでに質問されていますが、標記の件は疾病又は負傷に付、最初に療養の為、労務に服することができないことに至った場合においてのみ、待期の適用あるものとして
その後、労務に服し(医師の指示の有無を問わず)その疾病又は負傷に付、更に療養の為、労務に服することができないことに至った場合においては、待期の適用がないこととなる。
待期期間に有給休暇や公休日(土日祝日)を使ってもよいか?
待期期間にはすでに説明したように有給や土日を含めることができます。
公休日とは、普通の会社であれば土日や祝日、正月やお盆休みなど、美容師さんなら月曜日といったように会社が決めている休みの日です。
有給は説明する必要もないと思います。待期期間には有給を使うことが一般的だと思います。
参照:待期に有給休暇を使ってもよいという通達(昭和26年2月20日 保文発第419号)
療養のため欠勤したが、この欠勤開始の日から3日間を年次有給休暇として処理された場合にも、待期は完成し傷病手当金は給与計算上の欠勤開始日(前期欠勤開始日第4日目にあたる)から支給される。
参照:待期に公休日を使ってもよいという通達(昭和4年12月7日 保規第88号)
待期は公休日を含め暦日によるものとする